2015年頃だったかな、コンビニ各社が挙ってカウンターフーズのドーナツを展開し始めたのは。
僕は当時の時点でコンビニ勤務歴は10年を超えていて、コンビニのあれこれについては人より知っているつもり。
ドーナツのカウンター展開が始まった時、
「あー、これまた要らんモン始まったなー。絶対コケるやん。ていうかコケろ。」
ぐらいに思ってました。関係者の方々、すみません…
最近では全く見かけなくなってしまったコンビニのカウンタードーナツ。
これがなぜ廃れてしまったのかを、僕なりにコンビニ従業員の視点も交えて考えてみます。
そもそもおいしいの?
まず、そもそもコンビニドーナツが美味しいのかという問題。
カウンターでのドーナツが展開されだした当時といえば、コンビニコーヒーが全国のコンビニ各店にほぼほぼ導入され、一般的に認知され始めた頃です。
今ではどこのお店に行ってもコーヒーマシンは設置されていると思いますが、導入当初は同じコンビニチェーンでも店舗によって扱いがあったりなかったりの状態でした。コーヒーの売り上げが見込めるであろう店舗から順次導入が進んでいったのです。
そんなコーヒーマシンの導入と世間からの認知が進んできた頃合いに、次の一手としてぶっ込んできたのがカウンターでのドーナツ販売なのです。
それまでもパン売り場の片隅に少しばかりドーナツは置かれていましたが、それほど力を入れて売っているようなものではありませんでした。
そんなドーナツをカウンターに設置した什器で陳列することでコーヒーとのセットでの販売を狙ったのです。
コーヒーとドーナツをセットで買って持ち帰り、家での団欒のお供に…という狙いです。5個、6個と注文すればそれに対応した持ち帰り用の箱も用意されていました。
さらにこの頃から各店にイートインスペースが拡充してきたこともあり、その場での飲食も想定していたと思います。
もう、アレです…
ミスドです。
コンビニがミスタードーナツの土俵に殴り込みにいったのです。
実際にコンビニの現場ではミスドを意識したPOPを自作して訴求したりしていました。
で、実際のところミスドに対抗できるほど美味しいのか、という話ですが…
ミスドに勝てるわけなかった。
ということです。
昨今、どんどんオペレーションが複雑化多様化しているコンビニの現場で、ドーナツを一つ一つ焼いたり揚げたりする余裕は時間的にも人員的にもありません。
ただシンプルに配送されてくるものを什器に並べて販売するのみです。
それこそ、什器に陳列されるドーナツは
以前からパンコーナーに陳列販売されているものとほぼ同じなのです。
そんなドーナツがミスタードーナツの商品と比較されるまでもないのは明らかでした。
味に関して、決してマズくはないとは言え、消費者の胃袋は掴めなかったのでしょう。
鮮度管理
売る側のリスクとして、鮮度管理と廃棄リスクの問題があります。
「以前からパンコーナーで陳列販売されていたものとほぼ同じ」と前述しましたが、カウンターでの販売用にパッケージだけ変更して納品されているのです。中身に関しては同じものです。(什器販売用に多少成分は変更されているかもしれませんが)
従業員は、個包装されたドーナツを開封して什器に陳列することになります。
密封状態でのドーナツは通常、納品から3日〜4日ほど賞味期限に猶予があるのですが、開封して陳列するとなると当然その猶予は極端に少なくなります。
概ね陳列してから12時間という販売許容期限に設定されていたかと思います。
開封前の状態なら数日もつ商品を、わざわざ開封して陳列するのです。
しかも、開封前してしまえばその瞬間から刻一刻と消費状態は悪くなっていきます。陳列されたてのものと10時間ほど経過したものでは、やはり食感や風味に差が出てしまいます。
しかしお店側としてはギリギリまで置いておきたいと思うものです。コンビニの慣習上、販売期限の迫ったものを割引して販売するということも出来ないので、売れ残ってしまった分は廃棄するしかありません。
そうするとお店はどういう考えに至るか…。
これは、何店舗も何社も渡り歩いた僕の推測ですが
廃棄時間を誤魔化してしまえ
というところに行き着きます。
もちろん、きっちりルールを守って鮮度管理をされているお店もたくさんあると思います。
しかし、その逆にこういったモノをちょろまかしてしまうお店やオーナーもたくさんいると思います。
商品の廃棄ロスは基本的にはお店側の負担になり、コンビニ本部の懐は痛みません。そのため、少しでも廃棄ロスを減らしたいと思うのはコンビニオーナーにとっては当然の思いです。
お弁当やサンドイッチなどの商品とは違い、カウンターフーズ自体には賞味期限の記載はありません。
調理や陳列の際に従業員が鮮度管理表に作成時間を記入するなどして管理を行なっているので、お客さんからすればそのあたりはお店を信頼するしかないのです。
また、唐揚げやアメリカンドッグなどの揚げ物と比べてドーナツは販売許容時間が長く、(揚げ物類は5・6時間程度)もし許容時間が過ぎてしまったとしても、他のカウンターフーズと比べて見た目では新しいものとさほど変わらないため、
「多少過ぎてもまぁいいや。」
と、なぁなぁにされがちです。
そんな商品を掴まされたお客さんがどう思うかは想像に難くないですよね。
「そんなんだったら始めから個包装のまま売れよ。」
僕自身がカウンタードーナツ導入と聞いた瞬間に思ったことです。
什器の手入れ、清掃
ドーナツ什器に限ったことではないのですが、多くの場合、什器の清掃は夜勤の従業員が行うことになります。
客数が極端に少ない時間帯に清掃を済ませて、日中の客数が多い時間帯にしっかり陳列して商品を売りたいのだから当然の流れですが..。
揚げ物ケース、中華まん、おでん、コーヒーマシン、そしてドーナツ。
什器の清掃だけでもこれだけやらなければいけません。深夜とはいえお客さんは来るし、納品作業やら床清掃やら。
コンビニの夜勤がラクだと思われていたのは一昔前の話でしょうか。意外とやる事が多くて大変だったりします。
それだけ多忙な中、新たにドーナツの什器や備品を洗うという作業が増えます。単純に増えます。
そうなると自ずと全体のクオリティが下がります。
多少雑に洗ってもオッケー…みたいな雰囲気が出来上がっていきます。そうしないと実際間に合わないんだから。
(そもそも夜勤の従業員というものがサボる人や不真面目な人が多い傾向にある…というのも否定はできません。。)
結果どういうことになるかと言うと、
充分に清掃されていない什器…すみっこの方にドーナツのカスやチョコがこびりついたままだったり、
「あ、トング洗うの忘れてた…まぁいいか。」
みたいなことはどこのコンビニでも起こり得るわけです。
そういう細かい部分も、見ている人は見ています。
什器の配置スペースの問題
コンビニのカウンター周辺を見てみてください。
揚げ物、焼き鳥、中華まん、おでん
色々なFF商品がカウンター周辺に配置されています。
そこにさらにコーヒーマシンが配置され、それから間もなくドーナツが配置。
どうやって置くねん!
全国のコンビニ店員は、新しい什器が導入されると聞くたびに頭を悩ませます。
結局、空間が捻じ曲げられるわけでもなく、それまであったスペースを詰めて詰めて、レジ会計のスペースも狭めて、、なんとか納めると言った感じになることが多いです。
什器だけでなく、それに関連した備品を置いておくスペースも確保しなければいけません。
そうなるともうカウンター内にスペースがなくなり、ちょっとした作業をするにも不便になってしまいます。
タバコを補充する際に使いたいスペースだとか、お客さんから預かった宅急便の荷物はどうするの、とか。通常の業務の諸々に支障が出ます。
お店によっては、どうしてもドーナツ什器が置けない!となると、既存の何かを撤去しないといけなくなります。
そうなった場合に、たとえば中華まんの取り扱いを辞めて什器を入れ替え、ドーナツの販売をしたとします。
しばらくの間ドーナツを展開してみたものの、中華まんと比べてパッとしない…となるとお店としては中華まんに戻したいですよね。
でも本部としてはドーナツを推していきたいので、半ば無理矢理にドーナツの販売を続けさせられる…
といった、オーナーと本部の意向の違いによる対立もあっただろうと想像できます。
現在
そして現在では、コンビニのカウンターでドーナツを見かけることはなくなりました。僕が知らないだけでどこかのお店では未だに続いているのかもしれませんが。
結局元通り、パン売り場などでドーナツを見かけるようになりました。
心なしか以前よりもドーナツの種類が増え、存在感が増したように感じられます。
もう以前のようにパン売り場の片隅に追いやられるのではなく、ドーナツという1つのジャンルとして顧客に認識され、地位を確立することは出来たのではないでしょうか。
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