少年ジャンプにおけるバトル漫画の金字塔、ドラゴンボール。
ドラゴンボール及び鳥山明先生は、その後のすべての漫画家に影響を与えたと言っても過言ではありません。
もちろん冨樫義博先生も鳥山明先生をリスペクトしていて、HUNTER×HUNTERの作品内にも、ドラゴンボールのオマージュと思えるようなシーンや設定が色々な場面で見られます。
今回はそんなHUNTER×HUNTERにおけるドラゴンボールのオマージュと思われるものを紹介します。

パクリじゃないよ!リスペクトだよ!
野生児の主人公が巨大な魚を釣り上げる物語冒頭

主人公が自然豊かな場所で育った少年というのもドラゴンボールと似ているのですが、第一話を見比べてみても雰囲気が似ている事に気付きます。
ドラゴンボールの主人公である孫悟空は、パオズという自然豊かな場所で動物や魚を獲って1人で暮らしていました。
一方HUNTER×HUNTERの主人公ゴンは、くじら島で大自然に囲まれ、ミトさんやおばあちゃんと共に暮らしていました。
悟空は人里離れた山奥で一人で生活していましたが、ゴンは自然豊かな田舎とはいえ島には人が住んでいてその人達に囲まれて暮らしてきたので、悟空よりは遥かに対人コミュニケーションには長けている感じですね。

さすがにゴンは男女の区別が出来るし、キンタまくらとかやらない。
残像拳と肢曲

初期の頃の悟空やその他多くのキャラが使用していた残像拳。
素早く動くことで相手に自分の残像を見せ誤認させて攻撃をかわす技です。
でしたね。多くのキャラが使用していたことから、比較的容易に習得出来て汎用性の高い便利技のような扱い
HUNTER×HUNTERでキルアが使った“肢曲”も相手に残像を見せる技ですが、これは殺し屋が使う暗殺術のひとつで、誰でも使えるような技ではないようです。
ゴンが肢曲を見た時にやり方を知りたそうでしたが、ネテロに「知る必要がない。むしろ知ってはいかんものだ。」と止められていましたね。
武道会予選を手で押すだけで予選突破

ドラゴンボールがバトル漫画として人気を博した要因のひとつに「天下一武道会」が挙げられます。
人気キャラや新しい強敵などが一同に会し、闘技大会の優勝に向けてトーナメント方式で戦うという、読者少年のワクワク感をこれでもかと刺激する方式を発明したのがドラゴンボールでした。
HUNTER×HUNTER作中においてはトーナメント式の武術大会ではないものの、闘技場で勝ち上がっていくスタイルの「天空闘技場」がそれにあたります。
「幽遊白書」では“暗黒武術会”や“魔界統一トーナメント”でバトルトーナメント方式が描かれています。
上層階での戦いに勝ち上がるためにはまず、下層階での戦いに勝利する必要があるのですが、この下層階での戦いが天下一武道会でいう予選のようなものでした。
そこに至るまでの修行で自分でも気づかないうちにとんでもなく強くなっていて、相手を軽く押すだけであっさり勝ててしまう…という、ドラゴンボールで悟空やクリリンがやっていたことをそのままゴンがやっています。
「オーラ」という概念

HUNTER×HUNTERを語る上で欠かすことの出来ない「念能力」の根源である“オーラ”も、ドラゴンボールに強く影響を受けている要素の一つだと言えそうです。
これはHUNTER×HUNTERに限ったことではないですが、ドラゴンボールでは「気」と表現されている生命エネルギーのようなもので、後世のバトル漫画において「霊力」「チャクラ」、など、様々な呼称に置き換えられて使われる概念です。
エネルギーの塊として放ったり、全身に纏って力を増幅させたりと、その使われ方は様々ですが、多くのバトル漫画において生命エネルギーの源流のような描かれ方をしていて、HUNTER×HUNTERにおけるオーラもそのひとつです。
戦闘力の数値化
フリーザのセリフで「私の戦闘力は53万です」という有名なものがあるように、キャラクターの強さを数値で表すというのも多くのバトル漫画で描かれてきた試みかと思います。

HUNTER×HUNTERにおいてもキメラアント編で「オーラ量」の概念が登場し、ナックルの“ハコワレ”を説明する際などに描かれました。
しかしこの設定はイマイチ定着せず、キメラアント編が終焉して以降使われる事はなくなりました。
ドラゴンボールにおいても、戦闘力の概念はセル編以降ではほぼ使われなくなりましたね…。
戦闘力の数値化は少年漫画におけるインフレ加速の一因にもなりやすいので、作者としても扱いづらい要素なのかもしれません。

冨樫先生は設定を使い捨てるフシがあるので、こういう設定もキメラアントの強さを際立たせるために使ったのかもしれません。“設定の使い捨て”についてはまたの機会に…
ジャン拳とジャジャン拳

初期の悟空の必殺技には“ジャン拳”というものがありました。
悟空のジャン拳は特に何のひねりもなく、「グーで殴ってチョキで目潰し、パーで突き飛ばす」ぐらいのものでしたが。
ゴンの“ジャジャン拳”も少なからずそこからインスピレーションを得ていると思われます。
“グー”で打撃、“チー”で斬撃、“パー”で放出と、分かりやすくてマネしやすい、少年漫画としてワクワクする必殺技が出来上がっていますね。

グーしかまともに使えなかったゴンがキメラアント相手に“チョキ”を放った時は興奮した!
メルエムとセル

まず見た目がドラゴンボールに登場する“セル”に似ているのは言うまでもありませんね。
そしてその誕生も、セルがセミの脱皮のように抜け殻を残して出てきたのに対して、メルエムは女王蟻の腹を突き破って出てくるという生々しさ、気味の悪さも共通しています。
そしてセルが人を襲って吸収することで強くなっていったように、メルエムも他人のオーラを喰うほど強くなるという設定がありました。
そしてセルが一度自爆によって瀕死の状態から復活することでさらにパワーアップしてパーフェクトセルになったように、メルエムも貧者の薔薇の爆発により瀕死の状態に陥ってから復活することでさらなるパワーアップを遂げました。
状況は違えどセルを思い起こさせる部分がメルエムにはたくさんありますね。
世界樹とカリン塔

ドラゴンボールの世界で高い建物といえば、幼少期の悟空が「カリン塔」に登って強くなるエピソードを思い出します。
HUNTER×HUNTERの世界で高い建物といえば、(人工物ではないですが)世界樹がありますね。
世界樹の頂上でジンと会うシーンは、ゴンの物語の大目標でもあったので読者としても感慨深いシーンでした。
そしてまだ見ぬ暗黒大陸には、ゴンたちが登った世界樹よりも遥かに巨大なホンモノの世界樹が立っているそうで、これから先の冒険でそんな世界樹に登るシーンが描かれるのでしょうか。
そしてその頂上には「神様の神殿」のような何かが待ち構えているのでしょうか…。期待が膨らみます。
親から子(子から親)への世代交代

ドラゴンボールの魔人ブウ編にて主人公が悟空から悟飯へとバトンタッチされたように、主人公のバトンを世代交代。ハンターハンターでは、ゴン(子供)からジン(親)へと逆世代交代しています。
ドラゴンボールでは結局、魔人ブウ編のケリをつけたのは最終的には悟空でしたが。
ハンターハンターではキメラアントとの闘いでゴンはオーラが見えなくなり、今のところ物語の舞台からは降りている状態です。
選挙編以降はジン(親)へと主人公がバトンタッチしているような描かれ方をしています。
今のところBW号船内ではクラピカが中心になっていますが…。
ゴンは「親父(ジン)に会いたい」という大きな目標を達成してしまったため、メタ的に見てもあまり物語に絡んでくる必要がなくなってしまいました。今後は新たな目標をどう設定するのか、はたまたジンとの共闘が描かれることがあるのか…。冨樫義博先生はきっと僕らの予想の斜め上の展開を用意してくれると信じて待っています。
38巻表紙

長らく物語に直接関わっていないゴンが突如表紙に登場し話題になった38巻ですが、これは鳥山先生への追悼の意だと言われています。
悟空の道着やドラゴンボールそのものの色であるオレンジ色が“7か所”に使われている事や、コミックス巻数の数字が絵の中に描かれることがドラゴンボールをなぞらえています。
ハンターハンター38巻の表紙は何故ゴンなのか?意味や伏線を考察
おわりに
今回は、ハンターハンターに登場するドラゴンボールのオマージュと思われる要素について見ていきました。
- 物語冒頭
- 肢曲
- 手で押す
- オーラの概念
- ジャジャン拳
- セルエム
- 世界樹
- 主人公の世代交代
- 38巻表紙
今回挙げたこれら以外にもドラゴンボールオマージュは存在すると思います。
そしてこれから先も、何らかの形でドラゴンボールを意識した要素が物語に関わってくるかもしれません。
なんせ冨樫義博先生が「神」と崇めるほどの存在が、鳥山明先生なんですから。
休載が明けるのをずっと楽しみに待っています…!
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!