改めて見てみるとHUNTER×HUNTERには、幽遊白書の設定を使い回していると思われるものがいくつもあります。
冨樫先生がその昔、幽遊白書を当時のジャンプ連載漫画の中でも屈指の人気作に仕立てられたのは、読者に刺さるキャクターや設定の数々を絶妙に作り上げたことが大きな理由でしょう。
幽遊白書は全19巻と、今思えばコンパクトなボリュームに収められていますが、当時の冨樫先生は連載の終盤にはかなり体調に響くほど肉体的にも精神的にも追い込まれていたと言います。
編集部に頼みこんで何とか幽遊白書を終わらせたとのことで、それ以降は「自分の描きたいものを描く」という前提で作品を執筆されているようです。

「レベルE」の連載のあと、いよいよ連載スタートしたのが「HUNTER×HUNTER」なわけですが、この漫画は冨樫先生的にも幽遊白書のリベンジであると考えられそうです。
「幽遊白書」で、漫画として読者にウケるフォーマットが冨樫先生の中にすでに確立されていて、それをさらにブラッシュアップしたものがHUNTER×HUNTERに見られる数々のセルフオマージュなのではないでしょうか。
幽遊白書でやり残したことや、冨樫先生の中で温められていたアイデアを「HUNTER×HUNTER」という舞台装置を使って描くために、過去のアイデアをさらに磨いて使っていく。
そんな冨樫義博ワールドの魅力ともいえるセルフオマージュについて、見ていきましょう。
主人公4人のキャラ設定

幽遊白書の主人公格キャラ4人といえば
浦飯幽助・桑原和真・蔵馬・飛影ですね。

そして、HUNTER×HUNTERの主人公格キャラ4人といえば
ゴン・レオリオ・蔵馬・キルアです。
両作品を読んだことのある人なら誰もがすぐに思い当たるでしょう…
それぞれのキャラ立ちや性格がかなり似ています。
単純で真っ直ぐな性格のゴンと幽輔。
バカだけど情に厚い性格のレオリオと桑原。
知的で冷静な頭脳派のクラピカと蔵馬。
クールな中二病、スピードキャラのキルアと飛影。
それぞれ似通っている要素が多く、幽遊白書のキャラを念能力別に分類してもかなり近い能力を有しています。
単純で真っ直ぐな主人公が、到底敵わない強敵を前にして力を解放し、長髪の姿に。
情に厚いバカな奴が状況を切り拓く。そして自分の未来のために勉学に励み、合格を勝ち取る。
頭脳派の冷静な奴が、真の姿になった時はとんでもない戦闘力を発揮する。
クールな中二病の奴が、いつも余裕で敵を撃破してるっぽいけど実は結構な重傷を負ってたりする。(時に死にかける)
…などなど。
HUNTER×HUNTERを読んでいるとやはり幽遊白書のキャラクターに重なる部分が多く、そのあたりに想いを馳せながら読み進めるとまた楽しめるのですよねぇ。
こういうキャラクターの配置が冨樫先生的にも物語を描きやすく、読者にも刺さりやすいということなのかもしれません。
師匠がババア(と若い姿を使いわける)

幽輔の師匠といえば幻海ですね。
物語の初期から登場し、幽輔に修行をつけたり、霊光波動拳を継承するなど、幽輔の成長に大きく関わった人物です。

一方、ゴンやキルアの念能力の師匠としては(ウィングもですが)ビスケが挙げられます。
グリードアイランド編で出会い、ゴンキルの成長に大きく関わりました。
そんな主人公たちの師匠である幻海・ビスケともに、物語中では高齢なキャラクター。
ビスケをババア呼ばわりするのはちょっと気が引けますが、、実年齢57歳というのは作中でもかなり年配なほうで…。
そして両者ともに、若い姿と実年齢通りの姿が使い分けられています。
幻海は、霊力を高めると細胞が活性化し肉体がピーク時の二十歳前後に若返る…とのことでした。
ビスケに関しては、どういう原理かは自分でも分かっていないとのことですが、幻海とは逆に本来の姿(実年齢)の時の方が絶大なパワーを発揮しています。
ネテロも含めてのことですが、バトル漫画において老人は桁違いの強キャラであるパターンが多いですね。
超強い敵がB級だった

幽遊白書中盤の大ボスと言えば「戸愚呂」が有名です。
筋肉操作が特技の、念系統でいうならバキバキの強化系といった感じの人気キャラですね。
暗黒武術会編にて霊光波動拳の継承や玄海の死といった苦難乗り換え、死闘の果てになんとか戸愚呂を撃破し、武術界は幽輔たちの勝利で幕を閉じました。
暗黒武術会編のボスキャラとして幽輔の前に立ちはだかり、それまでに出会ったどんな敵よりも圧倒的なパワーを誇っていた戸愚呂ですが、その後の展開で彼が「B級妖怪」であったことが判明しました。
あんなに強かった戸愚呂が、B級。
魔界にはそれより上のA級妖怪やS級妖怪がゴロゴロいる…という事実に、作中で幽輔たちが驚愕するとともに読者の我々もビビらされました。

一方HUNTER×HUNTERで、作中で最も驚異的だったのがメルエムをはじめとしたキメラアント。
カイトも「未曾有の生物災害になる」といっていたほど。
作中で直接語られてはいませんが、コミックス33巻にて、危険生物の驚異度を表にしたものが掲載されていました。
その中でキメラアントはまさかの「総合B」
キメラアント以上に人類にとっての驚異になり得るヤバい生物がまたまだこの世界に存在するということが示唆され、暗黒大陸編への布石となっているようです。

魔界と暗黒大陸という異世界の存在

幽遊白書では仙水編にて、人間界と魔界を繋ぐ穴である「境界トンネル」が開かれたことで主人公たちが魔界へ行き、物語は魔界編へと繋がっていきました。
魔界はそれまでの人間界での戦いが比べ物にならないほど強力な力を持った妖怪たちが跋扈する世界。
そこには幽輔の魔族としての父である雷禅も絶大な力を誇り存在していて、幽輔たち主人公陣営の力など足元にも及ません。
そんな得体の知れない世界でどんな物語が繰り広げられるのか…
という絶頂のなか、幽遊白書は突如として終了しました。

一方のHUNTER×HUNTERは現在、暗黒大陸という未知の領域に踏み出すためのブラックホエール号の船内にて、様々な物語が描かれています。
幽遊白書で言うなら、境界トンネルを巡って仙水と壮絶なバトルを繰り広げている最中で、絶賛道草楽しみ中といったところです。
暗黒大陸に関する情報として、数々のリターンや5大厄災、そしてドンフリークスの存在が示されており、それらだけでも今後の展開への期待でワクワクが止まりませんね。
幽遊白書では描かれなかった「異世界での冒険活劇」をどうか最後まで描き切ってほしいと、一読者として願うばかりです。
(おまけ)ずっと変わらないアニメのオープニングテーマ
今となっては「微笑みの爆弾」は幽遊白書のオープニングとして不動の地位を確立していて、もはやこれ以外の曲は考えられませんよね。
今だに改めてこの曲を聴いても当時の夕方のワクワクを思い出すような、令和のオッサンの心にぶっ刺さったまま色褪せない名曲です。
アニメ版幽遊白書ではエンディングテーマは時期ごとに変わっていきましたが、オープニングテーマはずっとこの曲のままでした。
そしてHUNTER×HUNTERはというと、
1999年の旧版ではKenoの「おはよう。」がオープニングテーマとしてテレビ版の最終回まで使用されていました。
そして2011年からの新アニメのほうでは「depature!」が最終回まで一貫して使われています。
キメラアント編のダークな雰囲気にこの曲が合っていたのか…という賛否はあるようですが。
「一貫してオープニングテーマを変えない」というアニメスタッフのこだわりがあったのかは謎…

個人的には旧アニの「おはよう。」が圧倒的に好きすぎて、新版もこの曲で貫いて欲しかったほど。
まとめ

本記事で紹介した冨樫義博のセルフオマージュ
- 主人公4人のキャラ設定
- 師匠がババァ(と若い姿を使いわける)
- 超強い敵がB級だった
- 魔界と暗黒大陸という異世界
- ずっと変わらないアニメのオープニング
今回ご紹介したように、幽遊白書とHUNTER×HUNTERには、作者が意図的にセルフオマージュとして使ったと思われる描写が色々とあります。
当記事で取り上げた以外にも、一人前になるための試験という舞台設定や、父親が作中最強格のキャラだとか、細かいものも含めて色々なセルフオマージュがあると思います。
今後のHUNTER×HUNTERの展開の中でも何らかのセルフオマージュが登場するかもしれませんし、それを見越して考えると今後の暗黒大陸編の展開にも想像が膨らんで楽しいですよね!

「暗黒大陸統一トーナメント」とか言いだして連載終了…とかはマジでやめて…
