幻影旅団の中でも圧倒的なパワーを誇っていたウボォーギンという男。
仲間からもその戦闘能力は絶大な信頼を寄せられていました。
今回は、HUNTER×HUNTERの話が進むにつれ再評価されつつある彼の強さについて考えてみます。

↑銃弾を歯で受け止める。反応速度と“流”の精度がずば抜けている。並のハンターでは実現不可能な芸当。
ウボォーギンの強さ
長らく多くの読者の間ではHUNTER×HUNTERの世界観において、銃火器などによる攻撃はハンターや念能力者に対しては大して効果がないとイメージされていました。
しかし王位継承戦編でのクラピカの言動などから、ハンターといえど銃の種類によっては無傷では済まないと示唆されたことで、ウボォーギン(と、彼に殲滅された陰獣たち)の身体能力がとんでもないと判り再評価されています。
そんなウボォーギンの強さについて、攻撃力・防御力・精神力から考えてみます。
攻撃力
「強化系を極めた」と自分でも言ってるだけあって、単純な戦闘力で言えばおそらく作中トップクラス。
得意技は超破壊拳。ザ・強化系という感じの、念を込めた右ストレート。

小細工せず純粋な威力のみを追求した念パンチだからこそ威力は絶大で、小型ミサイルほどの威力があるとされています。
“凝”で拳にオーラを集中して繰り出すパンチなので、内容的にはほぼゴンの“ジャンケングー”と同じものです。(ゴンの“チョキ”や“パー”のように他に選択肢が無いぶんメモリが節約できるので、より威力が高い打撃技であると考えられます。)
本人の最終目標は核ミサイルほどの威力を出すこと…。実現出来れば間違いなく作中最強の威力の攻撃になりますね。
「核爆弾」といえば“貧者の薔薇”が思い当たるわけですが、念を込めただけの右ストレートがホントにあれほどの威力を成し得たら…ちょっと強すぎますね。

マジで「王にも届き得る」
防御力・硬さ
そして、攻撃力だけでなく防御面においても桁違いです。
ライフルを喰らっても「って〜」程度。

↑おそらくこの時は戦闘態勢をとっていたわけではないので、“堅”で守りを堅めているわけでもなく、通常の“纏”でこの防御力を実現していると思われます。
戦車もオシャカにするというバズーカ砲でも「かなり痛い」で済んでいます。(さすがに“硬”でガードしているとは思われますが)

もしかして上位キメラアントぐらいの硬さだったのかも。
並の念能力者なら、“硬”でガードしたり能力を使用して銃弾を回避する必要がありますが、ウボォーギンは真っ向から受け止めることが出来ています。

一応強化系とされるビルですら、銃弾を受けるのに“凝”によるガードで必死に対応している描写があることからも、いかにウボォーギンが強化系の中でも別格の強さを誇っていたのかを測り知れます。
精神力
そして、それらの強さの根底にあるのが並外れた精神力です。

毒で身体の自由を奪われ囚われているなかでも、ダルツォルネの剣(おそらく念で強化している)を弾くほどの頑強な肉体と揺るがない精神力。
クラピカが言っているように、ウボォーギンの頑強な肉体を支えている不動の精神力によって作られるオーラはまさに百戦錬磨。
生半可なハンターでは相手にもならない強さが、この精神力に裏打ちされています。
そんなウボォーギンに衝撃を与えるクラピカさんの攻撃力が実はハンパないのではないかという説も…
もしかしたらウボォーギンが本気になればメルエムとはいかないまでも、直属護衛軍の三匹と渡り合えるぐらいの強さがあったかもしれません。
ウボォーギンの制約と誓約
ではなぜもともと流星街のゴロつきの彼がそこまで強くなれたのか。
それは「生涯、悪役を演じ続ける」という制約を己に課していたからではないかと考えています。

クラピカとの戦いの際、「関わりのない人を殺す時、お前は何を考え、何を感じているんだ?」と問われ、「別に何も。」と答えていましたが、おそらくこれは嘘ではないでしょうか。
38巻の幻影旅団結成秘話が描かれましたが、その中でサラサが何者かに惨殺された時、誰よりも感情を露わにして怒っていたのはウボォーギンでした。
「関わりのない人間」をオモチャにして殺した人間に対して、深い怒りと悲しみを持つことのできるのがウボォーギンの本質。
仲間に対する思いは人一倍のものを持っていたはずです。
サラサの事件の際、クロロも心に深い闇を背負い悪党として生きることを決め、盗賊集団としての幻影旅団を設立する事になりました。
元々クロロはウボォーギンを団長にするつもりでしたが、ウボォーギンがクロロに「お前が頭だ」と逆に指名。そして一生クロロについていくことを決めました。

2人の信頼関係が感じられるやりとりです。
クロロへの信頼や、自身が幻影旅団員であるという決意と覚悟が、彼の念能力の威力を底上げしているのかもしれません。
おそらく、あの事件から3年後の本格的に活動を始めるまでの間に各々のメンバーが念を修得。
流星街育ちという特殊な環境と、仲間を弄んで殺された強い怒りが、それぞれの団員をあそこまで強くしたのでしょう。
もともとフィジカルに恵まれメンタルも強いウボォーギンですが、それだけではあそこまで強くなるとも考えづらいです。
おそらく彼も、「制約と誓約」によってあの力を実現しているはず。
そこで考え得る制約と誓約の内容が
「生涯悪役に徹する」
というもの。
そしてクラピカと同じようにそれに命を賭けていただろうと。もしかしたらそれ以上の何かを制約の代償にしていたかもしれません。
パクノダが能力の代償として「一番大切な人に触れない」という制約をかけていた事が38巻にて判明しました。やはり幻影旅団メンバーの強さの秘密は、それぞれがそういった制約と誓約を自らに課していることに由来するのかも知れません。

もともと幻影旅団は演劇集団。
クロロが幻影旅団の結成を決意して人々が恐れ慄く「悪者」になると決めた瞬間から、ウボォーギンも「クロロについて行くこと」を決めたのです。
クロロと同じように、悪党として人生を捧げる覚悟を。

そして、自分自身が先頭に立って闘うことで幻影旅団の悪党としての恐ろしさを世に知らしめ、流星街を守るための力になっていたのかもしれません。

クロロとともに世界一の悪役を目指そうとしていたウボォーギンだからこそ、「生涯悪役」という制約がジャストフィットして念能力が向上したのでしょう。
ヨークシン編でウボォーギンが亡くなった時、きっとクロロもはそんな彼のことを理解していたからこそ涙を流して「ウボーさん、貴方へのレクイエムです」と弔っていたんだと思います。
たしかにあの状況は、悪役を貫いたウボーさんへの手向けとして最高のものです。

(もともとクロロはウボォーギンのことをさん付けで呼んでたので、この時は素のクロロくんとして弔っていたと思われます。)
オールバックのスタイルの時は悪役幻影旅団団長としての姿、バンダナスタイルの時は一個人クロロくんとしての描き分けがあるのでは。という説も。
クラピカ戦での悪役っぷり

クラピカとの闘いの際、ウボォーギンはかなりの悪者っぷりを発揮していました。
相手が苛立つように、わざわざ悪者っぽいセリフを選んで発していたのではないでしょうか。
「たまにこういう奴がいるからやめられねェ。殺しはな。」「てめぇみたいなリベンジ野郎を返り討ちにすることだ!!」と、いかにも悪役が言いそうなセリフを連発しています。
そして、
「ヒノメ?なんだそりゃ。お宝の名前か?」
このセリフも本心ではなく、クラピカを煽るために嘘を言っている可能性すら感じられます。(そこそこ頭の良いウボォーギンが緋の目やクルタ族というキーワードを忘れたり知らないというのは不自然)
直後、クラピカの緋の目を見てから、「その目!思い出したぜ。キレると目が赤くなる奴等…」というセリフからの流れも、悪役として自然なセリフまわし。
そしてクラピカにやられる直前、何を言われても「殺せ」の一点張り。

悪役として潔く、筋の通った彼なりの美学や覚悟が感じられます。
“律する小指の鎖”を刺されて後がない最期の一言にも「くたばれ、バカが。」と悪役を貫き通したのは、自分の命よりも大きな誓約があったからなのかもしれない…と考えると、ウボォーギンという悪役として生きた男の哀しさが際立ちます。
元々単純で真っ直ぐな強化系の才能ある人間が、小細工せずに強さを突き詰めた結果があの強さなのだと言えるでしょう。(単純すぎたためか戦闘中の“凝”を怠ってしまい、念を封じられてクラピカに敗北)
ウボォーギンの強さは悪役として立ち振る舞うことに人生を捧げることで成し得たもの…。
そう、ゴンさんとはまた違ったベクトルで、時間をかけて強化系の極みに到達しようとしていた一人の男の生き様を見てとることができます。
【おまけ】陰獣への再評価路線

強者感を漂わせて登場したものの、ウボォーギンひとりに壊滅させられ噛ませ犬となってしまった陰獣の方々ですが、彼らを再評価する流れもあります。
不意打ちながらもウボォーギンに一撃を喰らわせて「効いたぜ」と言わしめたばかりか、反撃を攻喰らいながらも致命傷を避けていた蚯蚓。
一時的にとはいえウボォーギンを無力化出来ていた豪猪。
ライフルすら効かないウボォーギンの鋼の肉体に噛みついて傷を負せるほどの攻撃力を誇る病犬。
蛭もウボォーギンの体内にヒルを流し込んですぐ退散するか、もっと致死性の毒でも流し込んでいれば、少なくともウボォは討伐できていたはず。
やり方次第では勝ち筋は色々あっただろうに、拷問したり獲物をいたぶりたいという陰湿な性格が裏目に出てしまいましたね。そりゃ悪手じゃろ、陰獣…。
おわりに

この記事で書いているウボォーギンの制約と誓約については、あくまで僕の想像でしかないのですが、こう考えると色々な事に説明がつき、幻影旅団の物語がとても味わい深く感じられるので、この説を推したいと思います。

亡くなる直前のこのシーン、きっとサラサを殺した犯人に対して全く同じようなことを問いただしたはず。
それが巡り巡って自分自身に返ってきたこの時に、ウボォーギンは心の奥で何を思っていたのでしょうか。
そして本当に、クルタ族を襲撃虐殺したのは幻影旅団だったのか..。
ウボォーギンの「あいつら強かったな」発言はどこまで本当のことを言っていたのか…。
その答えが今後明かされるのか、期待して連載再開の時を待ちましょう。