『HUNTER×HUNTER』は、冨樫義博による人気漫画で、その緻密なストーリー展開と複雑なキャラクター設定、巧妙に張り巡らされた伏線で多くのファンを魅了しています。
物語の中心となるゴンが父親ジンと出会う場面は、物語の大きな節目である第338話(「再会」)で描かれ、感動的な瞬間として読者に強い印象を与えました。
今回は、もしこの場面でHUNTER×HUNTERが完結していた場合物語はどうなっていたのか、どのような伏線が未回収のまま残り、どのような影響が作品やファンに及んだかを考えてみます。

▲No.339「静寂」 の最後の一コマ。キメラアントからの一連の騒動が落ち着き、物語としてはちょうどここで一区切り。ここでハンターハンターが終わってもよかった??

ゴンとジンの再会が物語の終点だった場合の影響

ゴンがジンに会うという目標はHUNTER×HUNTERの物語の原動力であり、ゴンの旅の目的でした。
第338話でゴンはついにジンと対面し、互いの想いやこれまでの冒険について語り合います。
この場面は、ゴンのハンターとしての成長と、父親との関係性を象徴する重要なシーンです。
しかし、ここで物語が終わっていた場合、物語全体のテーマや読者の受け止め方は大きく変わったでしょう。
物語のテーマとゴールの達成

ゴンの旅は、「父親に会うこと」を主軸に進んできました。
ジンとの再会は、ゴンの個人的な目標の達成を意味し、彼の成長物語の一つの終着点として機能します。
物語がここで終われば、ゴンの冒険は「目標達成の物語」としてシンプルに完結し、少年漫画らしいハッピーエンドを迎えたと言えたかもしれません。
しかし、HUNTER×HUNTERの魅力は単なる目標達成にとどまらず、キャラクターたちの複雑な動機や世界観の深さにあるため、この結末は多くの読者にとって「物足りない」と感じられるでしょう。
ゴンはジンに会った後、さらなる目的(暗黒大陸への興味)を見出しており、彼の物語は父親との再会だけでは完結しない構造になっています。
よって、ジンとの再会で終わる物語はゴンの成長の一面を強調する一方で、彼のさらなる冒険心や好奇心、仲間との絆といったテーマが未完のまま残ることになります。

読者の受け止め方と物語の評価
HUNTER×HUNTERは、単なる少年漫画の枠を超え、哲学的・心理的なテーマや複雑な人間関係を描く作品として評価されています。
ゴンとジンの再会で物語が終われば、物語は比較的シンプルな「親子再会」の物語として完結し、一部の読者には満足感を与えたかもしれません。
しかし、HUNTER×HUNTERの魅力である広大な世界観や未解決の謎、キャラクターたちの複雑な背景が放置されるため、熱心なファンの間では「未完の傑作」として議論されることになるでしょう。
特に問題となるのは、ゴンの物語が終わることで、キルア、クラピカ、レオリオといった主要キャラクターの物語が中途半端になる点です。
キルアのゾルディック家との関係、クラピカの復讐、レオリオの医者になる夢など、彼らの物語はゴンの旅と並行して進行しており、ゴン単体の完結ではこれらの要素が宙に浮いてしまいます。

個人的には特に、0巻で描かれたクルタ族虐殺についての詳細をしっかり描いてほしいと願います…。
未回収の伏線とその影響
ゴンとジンの再会時点で物語が終わっていた場合、多くの伏線が未回収のまま残り、物語の解釈やファンの考察に大きな影響を与えたでしょう。
暗黒大陸の謎

暗黒大陸は、HUNTER×HUNTERの世界観において最も神秘的で壮大な要素の一つです。
ジンとの再会後、物語は現在暗黒大陸編および王位継承戦編へと続いています。
しかし、ゴンとジンの再会時点では、暗黒大陸はほのめかされる程度(例えば、ジンの会話やキメラアントの起源として)に留まっており、具体的な情報はほとんどありません。
暗黒大陸が未回収のまま残ると、読者は「世界の外側」に広がる未知の領域について想像するしかなく、HUNTER×HUNTERの世界観のスケールが損なわれます。
暗黒大陸はジンのハンターとしての目的や、ネテロ会長の過去、さらにはキメラアントの起源とも深く関連しており、これらが未解明のままでは物語の壮大さが十分に伝わらず、読者の期待にもそぐわないこととなってしまいまうでしよう。
キメラアント編の余波

キメラアント編はHUNTER×HUNTERの物語の中でも特に重厚で感情的なパートであり、ゴンの精神的な成長や犠牲、仲間との絆の深まりを描きました。
しかし、現時点ではキメラアント編の余波(例えば、ゴンの念能力の喪失や5000体のキメラアントの繭)の問題は完全には解決されていません。
特にゴンの念能力の喪失は、彼のハンターとしての将来に大きな影響を与える伏線です。この時点で物語が終われば、ゴンが再び念を使えるようになるのか、あるいはハンターとしての道をどう進むのかが不明のまま残ります。
また、キメラアントの生き残り(メレオロンやイカルゴなど)のその後も描かれず、ジャイロとは何ものだったのかも含めて、彼らの物語が中途半端に終わる点も問題です。
クラピカとクルタ族の復讐

クラピカの物語は、ゴンとは独立して進行しており、クラピカの復讐劇はまだ進行中です。
彼の目的である幻影旅団の壊滅や、クルタ族の緋の眼の回収は、暗黒大陸編や継承戦編でさらに深く掘り下げられます。
もし物語がここで終われば、クラピカの物語は未完に終わり、彼の苦悩や葛藤が解決されないまま放置されます。
クラピカの伏線はHUNTER×HUNTERのテーマでもある「復讐の空虚さ」や「目的と犠牲のバランス」を象徴しており、これが未回収だと物語のテーマ性が弱まるでしょう。
クラピカの物語が中途半端に終わることは、もはやHUNTER×HUNTERという作品全体のクオリティを台無しにしてしまう可能性があります。
ヒソカと幻影旅団

ヒソカと幻影旅団の対立は、HUNTER×HUNTERの魅力的なサブプロットの一つです。
特にクロロとの対決(天上競技場での戦い)は大きな注目を集めました。
しかし、この時点で物語が終われば、ヒソカとクロロの決着や、幻影旅団の目的が不明のままになります。
ヒソカのキャラクターは予測不可能な行動と強烈な個性で物語にスパイスを加えており、彼の物語が未完に終わることは、ファンにとって大きなフラストレーションとなるでしょう。
ゾルディック家の闇

キルアのゾルディック家との関係も重要な伏線の一つです。
キルアはアルカとの関係を深め、家族からの独立を模索しています。
ゾルディック家の全貌やカルトの目的、ナニカの正体(どのようにしてアルカに取り憑いたのか)などは未解明です。
特にナニカが暗黒大陸由来の生命体であることは後に示唆されており、これが未回収のままでは、キルアの物語が不完全なものになります。
キャラクターたちの結末と物語の満足度

ゴンとジンの再会で物語が終わると、各キャラクターの物語がどのような結末を迎えるかを考察します。
ゴンの物語:ハッピーエンドか未完の旅か
ゴンはジンに会うことで、物語の初期目標を達成します。
この時点でのゴンは、キメラアント編での過酷な経験を経て念能力を失った状態です。
物語がここで終われば、ゴンは「父親との再会」を果たしたハンターとして、ひとまずのハッピーエンドを迎えます。
しかし、ゴンの冒険心や新たな目標(例えば、暗黒大陸への興味)が描かれないため、彼の物語は「未完の旅」として解釈される可能性があります。
キルアの独立とアルカ
キルアは、ゴンとの友情を通じて成長し、ゾルディック家からの精神的独立を果たしつつあります。
しかし、キルアとアルカの旅は始まったばかりで、ナニカの謎やゾルディック家の影響は未解決です。
キルアの物語がここで終わると彼の成長物語は中途半端になり、ファンにとって物足りなさが残ります。
クラピカとレオリオの未完の夢
クラピカとレオリオはそれぞれの目的を個別に追求しています。
クラピカの復讐とレオリオの医者になる夢は現時点ではまだ進行中ですが、特にクラピカの物語は王位継承戦編で大きく進展すると思われます。
ここで終わることは多くの読者の期待を放棄することに他なりません。
レオリオも医者としての目標に向けた具体的な進展が描かれていないため、物語の満足度が低下します。
物語全体への影響とファンの反応
ゴンとジンの再会でHUNTER×HUNTERが完結した場合、物語全体のトーンやテーマ、ファンの反応はどうなるかを考察します。
物語のトーン:シンプルな少年漫画か
ゴンとジンの再会で終わる物語は、少年漫画らしい「目標達成」の物語としてまとまり、ポジティブなトーンで締めくくられます。
しかし、HUNTER×HUNTERの特徴であるダークで複雑なテーマ(復讐、犠牲、倫理の曖昧さなど)が十分に掘り下げられないため、作品の深みが損なわれます。
ファンの中には、「シンプルすぎる」と感じる層が多く出てくるでしょう。
ファンの反応:賛否両論の結末
HUNTER×HUNTERのファンは、物語の緻密さや伏線の回収を期待しているため、ゴンとジンの再会で終わる結末には賛否両論が巻き起こるでしょう。
一部のファンはゴンの目標達成に感動し、ハッピーエンドとして受け入れるかもしれません。
しかし、暗黒大陸や主要キャラクターの物語が未完に終わることに不満を抱くファンも多く、SNSでの議論が活発化するどころかちょっとした炎上騒ぎにまで発展するかもしれません。
特にXでの反応を想像すると、「未回収伏線が多すぎる」「クラピカの復讐どうなった?」「ジャイロって何だったんだ」などといった声が上がるでしょう。

まとめ:未完の魅力と可能性

ゴンとジンの再会でHUNTER×HUNTERが終わっていた場合、物語はゴンの個人的な目標達成というシンプルな結末を迎え、少年漫画らしいハッピーエンドとして一定の満足感を提供したでしょう。
しかし、暗黒大陸、キメラアント編の余波、クラピカやキルアの物語、ヒソカと幻影旅団など、多数の伏線が未回収のまま残り、物語の壮大さやテーマの深みが十分に発揮されない結果となります。
未回収の伏線は、ファンの想像力を刺激し二次創作や考察コミュニティを活性化させる一方で、物語の完全性に対する不満も生み出すでしょう。
結局のところ、ゴンとジンの再会は物語の重要な節目ですが、HUNTER×HUNTERの真髄は「旅の続き」と「未解決の謎」にあります。
物語がここで終わっていたら、HUNTER×HUNTERは「未完の傑作」として語り継がれ、ファンの間で無数の「if」の考察が生まれていたでしょう。
現在の暗黒大陸編や王位継承戦編で描かれていることこそ、冨樫義博の描く世界の深さと魅力を最大限に引き出していると言えるのかもしれません。