僕自身もドラムを始めようとしていた頃に抱いていた疑問。
「なんでドラマーって腕をクロスして叩くの?イキってんの??」
ドラムに触れた事がない人ならおそらく皆、不思議に思うであろうこの疑問。
今回はそんな疑問に対して素直に思うところをお答えしようと思います。
別にクロスしなくてもいい

はい、そうなんです。いきなり結論なんですが、
実は別に必ずしもクロスさせる必要なんてないのです。
ただ人間は右利きの人が多くて、どうしてもドラムの構造上運動量が多くなる部分を右手で処理した方が都合が良いのです。
つまりは結局その方が叩きやすいからそうしてる人が多いってだけ。
なので、もしあなたがこれからドラムを始めようと思っているなら必ずしも腕をクロスさせる必要はありません。
むしろオープンハンド(左手でハイハットを叩く)スタイルで上達していけば、一般的なドラマーとは一線を画した存在になれる可能性すらあったりします。
オープンハンドのメリットとデメリット

ではなぜ世の中の多くのドラマーがクロスハンドで演奏するのに対し、オープンハンドスタイルで演奏するドラマーがいるのか。
それは単に「左利きだからその方がやりやすい」という理由もありますが、オープンハンドで叩くことのメリットも大きく、デメリットと天秤にかけた結果オープンハンドでの演奏にこだわるのもドラマーとしての選択のひとつです。
オープンハンドのメリット
タム移動がしやすくフィルを入れやすい
通常のクロスハンドでの演奏であれば、ハイハットを刻みながらタムを叩くには腕を大きく交差する必要がありますが、オープンハンドであればこれを無理なく叩くことが出来ます。
フレーズによってはクロスハンドのままでは物理的にかなり無理がある場合もあるので、オープンハンドでの演奏が有利になります。
⚫︎オープンハンドならではの独創的なフレーズ
タムが叩きやすいことと関係しますが、オープンハンドのスタイルで右手の自由度が上がることで、クロスハンドのスタイルでは再現の難しいフレーズを難なくプレイでき、表現の幅が広がります。
左右の手をバランスよく鍛えられる
クロスハンドとオープンハンドをどちらも適宜使い分けられるぐらいになると言うことなし。最強です。
右手が優先的に器用になっていきがちなドラマーという生き物にとって、オープンハンドを習得するという事は、左手の強化に直結します。
左手でハイハットを刻む ということにとどまらず、ドラミング全体に良い影響が得られます。
見た目の独自性
圧倒的に数少ないオープンハンドスタイルのドラマーはそれだけで目を惹きやすく、同じドラマーから見てもかなり印象的。
自由にステージを動き回れないドラマーにとっての、貴重なアピールポイントになります。
オープンハンドのデメリット
教則動画や教材がクロスハンド前提なことが多い
当然ながら世の中のドラマーのほとんどがクロスハンドでの演奏スタイルであるため、教材の多くがクロスハンド前提です。
フレーズの多くがクロスハンドや右利きの人が叩く形で構成されているので、完コピするには苦労するかもしれません。
オープンハンド(左利き)でドラムを習得する場合は、それなりの工夫が必要になってきます。
セッティングに苦労する場合も
ドラムセットというもの自体がそもそも右利きを前提に構成されているため、オープンハンドや左利きのプレイヤーには優しくありません。
ライドシンバルを左手側にセッティングしたい場合や、その他タム類やシンバル類も自分のスタイルに合わせて位置調整しようとすると、一般的なドラマーに比べて大幅に時間が掛かります。
ライブハウスやスタジオによってはそもそもそういった大幅なセッティング変更が出来ない場合もあり得ます。
オープンハンドスタイル(左利き)で演奏したいドラマーさんは、そういった苦労を覚悟しておく必要があります。
あらゆるケースを想定して柔軟に対応できるよう、セッティングの妥協ポイントを探っておくことや、オーソドックスなセッティングでも演奏できるように日頃から練習しておく必要もあります。
オープンハンド(腕をクロスしない)ドラマー
そもそも左利きだったり、特別なこだわりがあったり、各々の理由で腕をクロスしないオープンハンドのスタイルで叩くプロドラマーもいます。
オープンハンドだからこそ繰り出せる独特なフレーズがあったり、ドラマーの常識にとらわれない見た目のカッコ良さがあったりと、オープンハンドを使いこなすドラマーたちならではの魅力があるのです。
サイモン・フィリップス
オープンハンドの第一人者と呼ばれるドラマー。
元々はジャズドラマーですが、プログレッシブなフュージョンからヘビーメタルまで多彩なジャンルを幅広くプレイできるミュージシャンです。
ハイハットを低い位置にセッティングするほか、ライドシンバルも左側にセッティングしてオープンハンドでの演奏に特化しています。
このセッティングと奏法により、通常のクロスハンドでは難しいフレーズの数々が繰り出されます。
刄田綴色(東京事変)
オープンハンドスタイル前提のセッティングで、さまざまなジャンルの技術やリズムが盛り込まれた変則的かつ高度なスタイル。
比較的手数が多い中でも力強く根底にロックを感じさせる技巧派ドラマーです。
茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ)
東京スカパラダイスオーケストラのドラマー。
オープンハンドを前提としたセッティングで、ライドシンバルを左手側にセットし、スネアなども左寄りにセッティングしています。
オープンハンドならではのフレーズを多用するテクニカルなスタイル。
右手側でハイハットを叩くには

「左手でハイハットを叩くのは難しい…でもオープンハンドスタイルで叩きたい!」
というワガママなドラマーさんのために、いくつか考えられる方法を。
セッティングを反転する
腕をクロスさせずに右手でハイハットを叩くにはそもそもハイハットを右側に設置すればいいのですが…
そうすると必然的に右足でハイハットペダル、左足でバスドラムペダルを踏むことになります。
不可能ではないですが、多くのドラマーが慣れ親しんできた常識を覆すことになり、慣れるまでの練習をイチから積み重ねる必要が出てきます。
初心者の頃からこの形でやっていくぐらいでないとかなり無駄が多くなるので、覚悟を持って挑む必要があります。
また、スタジオやライブハウスで毎回セッティングのために膨大な時間がかかってしまうのも大きな問題になります。(ライブハウスのスタッフさんにはかなり嫌がられる可能性が高いです。)
リモートハイハットスタンドを使う

どうしても右側でハイハットを叩きたい・叩く必要があるなら、リモートハイハットスタンドを導入するのが現実的です。
ハイハット本体とペダルがワイヤーで繋がっているので、ある程度自由な位置にハイハットをセットすることが可能になり、左足でペダルで踏みながら本体を右手で叩きやすい位置に配置することができます。
こういったリモートハイハットスタンドをセットに組み飲んで、サブのハイハットとして使うプロドラマーもいます。
個人的には、L’Arc〜en〜Cielのyukihiroさんがサブハイハットを使って両腕を広げる形で16ビートを叩いているのが印象的です。
まとめ
「なんでドラムを叩く時に腕をクロスするの?」という初心者の疑問への答えとしては、
ドラムを叩く時に腕をクロスするのは、その方がやりやすいから!
という、シンプルなものです。
これからドラムを始めてみたい初心者ドラマーの方は、必ずしも腕をクロスする必要はありません。とりあえずは自分のやりやすい方の叩き方でいいのです。
がしかし、クロスして叩く方が後々の苦労は圧倒的に少なくなります。多くのドラマーがクロスハンドでドラムを叩くのは、それなりの理由があるからなのです。
それでも自分はオープンハンドでやっていく!と言うのなら、それもまた良いでしょう。
オープンハンドは“変わった叩き方”と言うより、トッププロも実践している合理的なスタイルです。
ドラマーとしての茨の道を行くことにはなりますが、修練の果てに見える景色は他のドラマーとは一味違ったものになるはず。
理想的には、通常のクロスハンドに加えて場面に応じてオープンハンドで叩けるようなると、様々な場面での表現力の幅が広がって最高です。見た目のインパクトも強くなり、ドラマーとして一目置かれる存在になれるでしょう。

